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8/19/2022

 Chapter 10  >>


10. 解呪

なんというか、見るからに怪しい物を扱っています!という雰囲気の漂う店構えなのだが大丈夫なのだろうか?
まずダグラス様が扉を開けて中に入られ、ご主人様がそれに続かれる。

「邪魔するぞ」
「おや、ギルドの旦那じゃございませんか、こんなところに足を運ばれるなんて珍しい。何かご入用でございますか?」

店の中には眼鏡をかけた穏やかそうな老紳士がいた。
その背中には黒いコウモリのような羽が生えていたが。

「いや、そうじゃねぇんだ。ちっとばかし魔法具に詳しい人間に聞きたいことがあってな。お前さんなら大丈夫だろうと思って来たんだが」
「魔法具のことならお任せください。して、詳しい内容をお伺いしても?」
「ああ、奴隷の呪いがかけられた魔法具の外し方を知りてぇんだが」
「奴隷用の魔法具というと隷属の首輪のことでございますね。ええ、もちろん存じておりますが」
「ありがてぇ。早速教えてもらえるか?で、外せるなら今外してもらいてぇんだが」
「今……でございますか?ということはそちら、ゲイルさんが抱きかかえられていらっしゃるのが?」
「ちょっと訳ありでな、奴隷市から引き取ったんだが魔法具で言葉を喋ることを禁じられてるみてぇでとってやりてぇんだ」
「かしこまりました。まずは、魔法具の種類とかけられている呪いを確認させていただいても?」

店の主人(マルドさんという名前なのだろうか?)は私の元へ近寄ってくると、首元につけられた金属の首輪をしげしげと眺めて、何かをつぶやくと一瞬首輪が光を放ってすぐに落ち着いた。

「これはこれは、随分たくさんの制約がかけられてますねぇ……。不服従禁止、自死禁止、発語禁止に魔力封じとここまで厳重なのも珍しい」
「それで、外すことはできるのか?」
「ええ、問題ございませんよ。奴隷の契約書はお持ちで?」
「ここにある」

ご主人様がマルドさんへ羊皮紙のようなものを渡された。

「なるほどヒト族の性奴隷ですか、あれほど厳重な呪がかけられているのも納得ですね」
「申し訳ないが詮索無用で頼めるか?」
「もちろんでございます、この商売信用が第一ですからね。それでは解呪に入りますので奴隷の所有権をお持ちの方がこちらの契約書の魔法陣へ数滴ほど血を垂らしていただけますかな?」
「わかった。」

ご主人様はマルドさんから差し出されたナイフを受け取ると親指を躊躇なくその刃の上に滑らせる。
じわっと傷口からあふれでた血を契約書にたらされた。
私のためにそんなことをさせてしまったことが申し訳なくて、ご主人様の傷ついた親指を口に含み血をなめとる。

「心配するな、こんなもの傷のうちにもはいらない」
「ちぇっ、ゲイルお前ばっかりずりぃよなぁ」
「それでは解呪しますよ」

マルドさんが契約書に向かって何か呪文のようなものを唱え終えるとパンッと音がして私の喉元にあった金属の輪は粉々に砕け散り消え去る。

「はい、これで隷属の首輪に込められていた呪いは全て解けましたよ」

マルドさんがこちらに向かって微笑んでいた。

「おい坊主、声はだせるか?」

ダグラス様に言われ、声を出そうと試みる。

「は…い、ありが…と…ござ…ます」

何年も喋っていなかったせいで声はかすれており、喋ること自体に違和感を覚えたがなんとか喋ることはできそうだ。
何より自分の言葉で喋れたことの喜びがとても大きい。

「よし、良かったなぁ坊主。これで色々ゆっくり話すことができるが、まずは場所をうつしたほうがいいだろう。マルド助かったぜ、代金は後で他のものとまとめて請求してくれるか?」
「いえいえ、これぐらいのことでお代を頂戴するわけには参りません。ギルドにもゲイルさんにもいつもご贔屓にしていただいておりますからね。これぐらいはサービスにさせていただきますよ」
「すまないな、マルド。本当に助かった」

そう言われるとご主人様は私を抱きかかえられたまま軽く会釈をマルドさんにされる。
立ち去ろうとされたので私も急いでマルドさんに頭を下げながらお礼をつげる。

「あり…が…う…ございま…た」

マルドさんは穏やかな微笑みを返してくれた。
その後、マルドさんに呼び止められたダグラス様が深刻な顔をして何か話をされていた。
マルドさんの店をあとにするとどうやらミンツさんとの約束通りギルドへと向かうらしい。
その道中でダグラス様は何か色々と買い込まれており、その片腕にはパンパンにふくらんだ紙袋が抱きかかえられている。

「色々と必要なもの買い込んでおいたぜ、特に坊主は久しぶりに喋るだろうから喉に優しい飲み物もな。ほらこれ飲ませてやりな」

手の先に掴まれていた植物で編まれた水筒のような物をご主人様に渡される。

「あり…がとうございま…す」

声はかすれたままだが喋ることへの違和感はほとんどなくなっている。
ご主人様が水筒の飲み口を私の口に差し出してこられた。

「あっ……、申し訳…りま…せん。自分で飲めま…す」
「大丈夫だ、そのまま口を開けて飲むんだ」

なにがどう大丈夫なのかわからなかったがおとなしく差し出された飲み口を咥え、注ぎ込まれるままに液体を飲み込んでいく。
優しいはちみつのような甘さの中にわずかに薬草のような味と柑橘のさわやかさを感じる液体が喉に染み渡り生き返るようだ。
ごくごくと注ぎ込まれるままに飲んでしまった。

「喉を傷めたときに使われる薬草の入った飲み物だ、気に入ったようだな」
「美味しかった…です。ありがとうございます」

声のかすれもほとんどなくなり、発声も問題なくなってきた。

「よし、調子は良いようだな。聞きたいことは山程あるがミンツを待たせると怖いからな、まずはギルドに向かおう」

その後、黙々としばらく歩き続け3階建てぐらいの比較的大きな建物に到着した。

「ここが俺たちの仕事場のギルドだ、中を案内してやりてぇところだがまた後でな。ミンツも待ってるだろうから、俺たちの仕事部屋へ行くぞ」

ギルドの中へ入るとそこでは様々な種族の獣人が忙しそうに働いており、剣や鎧で武装して何やら集団で相談事をしているような人たちもいる。
カウンターのようなところで受付をしていた人がこちらに声をかけてきた。

「支部長にゲイル補佐じゃないですか、今日はお休みじゃなかったんですか?」
「いやちょっと野暮用でな、ミンツに俺の部屋に来るように伝えてもらえるか?」
「承知しました」

軽く挨拶のようなものを交わすとご主人様とダグラス様は階段を三階まで上り、一番奥の部屋へと進まれた。
そこは、事務作業を行うような机と椅子がいくつか用意された執務室と、人を迎えることが出来る応接室のような作りになっていた。
ご主人様は応接間の方にあるソファに腰掛けると例の如く私を膝の上にちょこんと座らせ、ダグラス様は向かい側に座られる。

「あの、ご主人様……。お膝の上に座らせて頂くのも申し訳ないですし、私は一人で座れますので……」
「いや、君の定位置はここだから問題はない」

意味がわからなかった。

「いや、でも……その……お膝の上に乗せていただくような年でもないと思いますし……」
「そんな年でもないって坊主いくつなんだ?」

ダグラス様からそう質問をされたと同時に部屋のドアをノックする音が響いた。

「支部長、ミンツです。入ってもよろしいですか?」
「ああ、入ってくれ」
「失礼します、こちらにこられたということは無事に呪いの方は解けたということですね!」

そう言いながらミンツさんは隣のソファに腰掛けて私の首元を確認している。

「ああよかった、綺麗に無くなってますね」
「はい、色々とありがとうございました」

本当にお世話になったので感謝の気持ちを込めて頭を下げておいた。

「で、話が脱線しちまったが坊主、年はいくつなんだ?」
「あっはい、あの奴隷になる前のことは良く覚えていないんです。奴隷になっていた間にどれぐらい時間が経ったのかはっきりとわからないので正確ではないかもしれません。多分、16歳か17歳ぐらいだと思います。」

こちらに来たときの身体の大きさが大体中学生になるかならない程度だったのでそこから奴隷になっていた期間が四~五年程度だろうと仮定した年齢だった。
さすがに元々の実年齢を答えてもしょうがないとはわかっていたので。
しかし、なぜか全員が完全に固まっていた。

「あの、本当に正確ではないかもしれませんが自覚している年だとそれぐらいなんです……」
「まじかよ……」
「…………」
「嘘でしょう……」

ダグラス様は何かをぶつぶつと呟き、ご主人様はしかめっ面で考えこまれ、ミンツさんは天井を見上げられていた。

「えっと、申し訳ありません。私は何歳ぐらいに見えるのでしょうか……?」
「んー10歳とかそのあたりか?」
「成人しているとはとても見えないな」
「そうですね……私も同じ意見です」
「あの、この国の成人は何歳なのでしょうか?」
「15歳だ」

確かに童顔ではあるがそこまで幼く見えていたとは想定外だ。
だが、それであればご主人様やダグラス様のあの幼子に接するような態度にも納得がいく。

「もっ、申し訳ありません……」
「あっいや別に悪くはねぇな……うん、こちらとしては好都合だ」
「好都合……?」
「いや、それはこっちの話な、正確な年齢もギルドタグを作る時に判別できるからまぁ安心していい」
「そうだな、ところでそろそろ君の名前を教えてくれないか?」

そうご主人様に告げられて、喋れるようになったにも関わらず名乗ってすらいないことに気づいてあせる。

「申し訳ありません、私の名前は森羅シンラ 親之チカユキと申します。ご主人様、ダグラス様、私を買ってくださりありがとうございました。あのまま死ぬことを覚悟しておりましたので、手当てだけでなく寝床に食事まで与えてくださったこと本当に感謝しております。」

自己紹介と感謝の意をつげて深々と頭を下げる。
ご主人様の膝の上でだが……

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